いつまで“暫定”なのか?──見直されない日本の税制とその本質

📌 重要検討分野と現状

1. 金融所得課税の「総合課税化・累進化」

  • 現行では株式配当や譲渡益は一律20.315%(分離課税)。給与所得との逆進的格差が大きく是正が求められている。
  • 2025年にミニマムタックス(超富裕層への追加課税)が導入された 。
  • 与野党とも議論はあるが、抜本的改革(累進化や総合課税移行)は進んでいない。

2. 租税特別措置の整理・廃止

  • 多くの優遇措置(法人税特例、投資控除など)は昭和期に導入されたまま温存され、合理性に疑問。
  • 政府資料でも繰り返し整理の必要性が表明されているが、実際の縮減は限定的。

3. 環境税・炭素税の強化遅れ

  • 欧州に比べ日本の炭素税は低水準であり、脱炭素対応税制の整備は遅延中(国内資料では未確認だが、国際的指摘多数)。

4. 印紙税の時代遅れ問題

  • 電子契約の普及にあわせて紙契約への課税(印紙税)は実質的に不要との観点から見直し議論あり 。
  • 廃止や体系的改革は進んでおらず、制度の合理性が問題視されている。

5. 消費税の逆進性・二重課税問題

  • 低所得者ほど負担重くなる逆進性への対応は未整備。
  • 食料品の軽減税率はあるものの、根本的な給付付き税額控除などは未実施 。
  • ガソリン税や酒税への消費税上乗せ(二重課税)も継続中。

📝 提言と改善策

項目提言内容
1. 金融所得課税の累進化・分離課税から総合課税へ変更し、高所得者には高率課税を課す・既に導入済みのミニマムタックスを拡張し、1億円超の所得者への累進課税制度拡充
2. 租税特別措置の体系整理・目的・効果を検証し、効果薄い措置を廃止・縮小・特例適用期限の明示と定期再評価制度の導入
3. 環境・炭素税の強化・税率を国際水準(EU等)へ引き上げ・環境投資とのリンク、炭素税収の脱炭素対策への専用化
4. 印紙税の電子化対応・電子契約への印紙免除・一定金額以下や重要書類に限定するなど整理
5. 消費税の逆進性対応・給付付き税額控除の導入(野党案などを参考)・低所得者に対する消費税率引き下げ検討・ガソリン税などへの消費税上乗せの解消 |

✅ 今後の進め方

  1. 税制調査会等での議論強化
     - 明確なスケジュールを設定し、各項目の検討期限を定めた議論の場を設置すべき。
  2. 独立機関による評価体制の整備
     - 諸外国では機能している「租税評価機関」を日本にも導入し、制度評価を定期化。
  3. 市民への説明責任の徹底
     - 税制の複雑さ・不公平感に関する国民理解を促す広報と、透明性のある根拠提示が不可欠。

🧭 調査過程まとめ

  • 金融所得課税やオンライン契約課税の問題は、政府・経済系メディア等で現在進行形で議論中。
  • 租税特別措置の整理努力は資料(経産省レポート)にも記載されているが、実効性には課題あり。
  • 提言は国際水準や過去の失敗例、与野党の政策構想などに基づく現実的な提案。

✅ 結び

日本の税制改革において「暫定」や「特例」の名目で据え置かれた制度は、やがてその合理性を失い恒久措置となり、制度の透明性・公平性を損ねています。特に金融所得課税・租税特別措置・環境税・印紙税・消費税負担構造は、国際的な潮流や社会正義の観点からも緊急の見直しが必要です。今後、明確な検討スケジュールと機関評価を前提に、国会・政府が具体的な改正に着手し、市民にもわかりやすく説明する体制構築が求められます。